天中殺の現象を理屈ではなく、感覚的に説明してみたいと思います。天中殺は簡単に言いますと、時間が流れているにも関わらず、空間・環境が虚(現実ではない)であり、枠がなく自分ではコントロールできないことを言います。そのため、能動的に事を起こしますと上にも下にも大きくぶれる可能性があります。
例えば年運天中殺、今年であれば「乙巳」ですので、辰巳天中殺の方が天中殺期間となり、巳の上にのっている十干の「乙」が虚になっていることを意味します。自身の日干によって、乙が何の十大主星になるかはそれぞれ異なるのですが、「乙」という環境・空間をコントロールすることができない、頼れない、自分に味方をしてくれないということになります。ですから天中殺期間は、現実的なことや新しいことは起こさずに、受け身の姿勢でいつも通りの生活や精神的なことを静かにすると良いと言われています。
具体的にはどういう感覚になるのかというのを私の実体験から説明してみたいと思います。これは下に大きくぶれた経験です。
数年前に私は大きな台風を経験しました。このときは、あらゆる商業施設が臨時休業を決め、公共交通機関も止まっていました。不要不急の外出以外は控えるようにとの警報もでていましたので、もちろん学校はお休み、職場に関してもお休みのところが多かったと記憶しています。
ところが当時私が働いていた職場は、社長自ら休業の姿勢をとるどころか、「他が休業ならば今日は稼ぎ時!独り勝ち!」と言い、全社員を出社させるという命令を下したのでした。
と言いましても、公共の交通機関は止まっているわけで出社方法がありません。家族に車で送ってもらうこともできず、タクシーを捕まえようにも、嵐の時はタクシーなんてなかなか掴まるはずもなく、また流れのタクシーなども流れているわけもなく、強風で外で待機することもできないわけですから、何件も何件もタクシー会社に連絡し、やっとタクシーの手配ができました。自宅前まで迎えに来てもらいましたが、暴風雨で傘は全く役に立たず、タクシーに乗り込むまでの少しの距離でもずぶ濡れになってしまいました。
タクシーに乗り込んでからも大変で、あまりの強風のためタクシーはゆっくりのろのろ運転で、強風にあおられユラユラ揺れ、道路をくねくねと走るのです。その怖さといったら・・・・!目的地に行きつくまでに突風に飛ばされて死ぬんじゃないかとさえ思いました。タクシーの運転手さんとお話をしましたが、その日はあまりの悪天候のため出社をしないドライバーも多数おり、タクシー不足だと言っていました。
「そりゃそうだろうな・・・こんなひどい風にあおられての走行なんて、命がいくつあっても足りない・・・」と思ったものでした。
看板が強風で飛んでいったり、ビニール袋やらなんやらが宙を舞う、そんな光景を横目にタクシーがくねくねと走行しながら、やっと目的地に到着しました。驚いたことに、悪天候にも関わらず、社長命令だったため、全社員出社していました!就業が開始しても悪天候の中、まともに仕事が進むわけもなく、そしてとうとう事件が起きます。
お客様がいらっしゃる場所に、大きな看板のような雨戸のような板が窓ガラスを壊し突っ込んできたのです。危うくお客様に直撃する大惨事でした。
建物だけが壊れ、お客様にはお怪我もなく、一切被害はありませんでしたが、お客様はものすごく怖い体験をされ、ショックだったと思います。信用丸つぶれです。その後、私たち社員は壊れた場所のあと片付けをさせられた挙句、修繕費用が数百万円かかるとわかり機嫌の悪くなった社長に当たり散らされたのでした。
社長命令でしたのでその当時は背くことはできなかったのですが、暴風警報が出ているような最大級の台風が来ているようなときは外に出るべきではなく(当たり前ですけど笑)、大人しく自宅待機が理に適っており、そうしていれば災難は降りかかってこなかったわけです。
社長にしても欲を出さずに、その日は臨時休業にでもしていれば、信用を無くすことも数百万円の損もしなくても済んだわけですし、自分が不快な思いをすることもなかったでしょう。この時、社員は全員無事に出社できましたが、もし出社時に飛んできた障害物にでもあたってケガをしたり、亡くなる社員でも出てしまったなら、労災どころの騒ぎではなく、社員の命を軽視した責任問題に発展する可能性もあったかもしれません。
この時の体験は、まさしく天中殺に似ているなぁと後々思いました。天中殺はこのように、台風のような自分ではコントロールできない環境下に置かれることと同じなのだと。嵐の中の航海に出るようなものなのだと。
何をするにも壁が立ちはだかり、解決手段がなかなか見つからず、前に進むことができない。引き返そうにも引き返すこともできず、無理やり手段を見つけてやっと前に進んでも向かい風にあおられて自分はボロボロの状態になり、どこからも助けも得られない。そして最後は潰される。下に大きくぶれるときというのはこんな感覚なのです。
何をするにもタイミングというのは非常に大事で、苦労せずにも成果を得ることができるときもあれば、このようにどんなに頑張っても一向に成果が得られないこともあるということです。
天中殺の詳しい解説はこちらから→天中殺解説